自作のFX自動売買ボットを運用しています。今回は「ボリンジャーバンドのスクイーズ(収縮)からエクスパンション(拡大)、そしてバンドウォーク(バンドに沿った一方向の伸び)を取りにいけるか」を、かなり徹底的に検証した記録です。結論から言うと——現象は確かに起きる。なのにボットにすると取れない。その理由が数字ではっきり出ました。
- スクイーズ解除後に大きく動く(バンドウォークする)こと自体は、本当に頻繁に起きる(64%が動き、30%は特大ウォーク)。
- だが上か下かは、ほぼ完全な50/50(上33% / 下31% / もみ合い35%)。
- =スクイーズは「いつ動くか」を教えるが「どっちに動くか」は教えない。これは市場効率の現れ。
- 「チャートで見ると明らか」なのは生存者バイアス(うまくいった1本だけ目に残る)。
きっかけ:チャートでは「明らかに取れる」
金(XAUUSD)の5分足を見ていると、横ばいでバンドがキュッと縮んだあと、ドカンと一方向に伸びてバンドに張り付く——という動きが何度も目に入ります。後から見れば、入る場所も方向も「明らか」。だったらルール化してボットに取らせればいい、と考えました。
総当たりで検証した
エントリーのタイミング(ブレイク後/ブレイク前の先回り)、方向の決め方(移動平均・MACD・ADX・各種オシレーター)、利確と損切り、執行する時間足(1分・5分・15分)、銘柄(金・ポンド円・ポンドドルなど)——思いつく組み合わせをひたすら回しました。
そして「なぜ取れないのか」を一発で切り分けるために、もし方向を“未来から”正解にできたらいくら稼げるか(オラクル)も測りました。
分かったこと①:ウォークは“実在”する
金の5分足で、スクイーズが解除された約1万1千回ぶんの「その後どうなったか」を分類しました。
| 解除後の結末(約100分) | 割合 |
|---|---|
| キレイな上ウォーク | 33% |
| キレイな下ウォーク | 31% |
| もみ合い(小動き) | 35% |
| 大ウォーク(大きく一方向)が発生 | 30% |
つまり64%が明確なウォークになり、30%は特大の動き。「スクイーズの後は動く」という体感は、データでも正しかったのです。
分かったこと②:でも方向は“コイン投げ”
問題はここです。上ウォーク33% に対して 下ウォーク31%。大ウォークに限っても上49% / 下51%。解除した瞬間に、上か下かはほぼ半々でした。
移動平均の向き、MACD、ADXの方向(±DI)——単独で「方向シグナル」に使うと、的中率はどれも50%前後(コイン投げ)。何を足しても方向は当たりませんでした。
なぜ方向だけ分からないのか
スクイーズは、誰の目にも明らかな・最も有名なチャートパターンです。もしブレイクの方向が予測できるなら、みんなそこに張って価格に織り込まれ、消えてしまう。市場はこの「明白な節目」を、ニュースや先に動いた人の注文で実質ランダムに上下どちらかへ解決します。だから——
ボラティリティ(動くこと)は予測できる。方向は予測できない。
「チャートでは明らか」の正体は生存者バイアス
完成したチャートを見ると、ウォークもその方向も自明に見えます。でもその同じローソク足から前へ再生すると、33%上・31%下・35%もみ合いのくじ引き。チャートは「当たった1本」を見せ、私たちの目はしくじった大量のもみ合いや逆方向ブレイクを無意識に消しているのです。
唯一生き残った構成と、その正直な評価
50/50の方向を、唯一わずかに(的中56%まで)押し上げられたのは「強いトレンドが既に出ているときだけ・トレンド方向に乗る」という、強度フィルタ+移動平均クロスを重ねた金専用・5分足の構成でした。過去14か月のバックテストでは見栄えの良い数字(プロフィットファクター約2.1)が出ました。
今日の学び
「目に見える=取れる」ではない、という当たり前を、数字で突きつけられた一日でした。見えているのは“動き”という結果であって、それを事前に・方向込みで・コストを払ってなお抜き出すのは別問題。スクイーズ単体は「タイマー」であって「方位磁石」ではない、というのが結論です。
とはいえ、これだけ掘って唯一かすかに光った金の一角を、デモで静かに観察し続けます。崩れたら棚上げ、続けば次の一手。研究の良いところは、負けるアイデアを実弾の前にふるい落とせることだと、あらためて思いました。
※本記事は自作ボットの研究記録です。特定の売買を推奨するものではありません。バックテストの数値は過去の検証結果であり、将来の成績を保証しません。
